東西脱原発トークバトル 松本哉対談
脱原発。放射能。再生可能エネルギー
実際、公園に着いたときはやたらしょぼいんですよ(笑)(松本)
司会
次のトークテーマは
「オキュペーションは貧困格差を打ち破れるのか」
ということで行いたいと思います。
ではまず松本さんにニューヨークに行った感想と、
どんな感じだったかという雰囲気を伝えてもらいたいと思います。
松本
行ってきましたよ、ニューヨークに(笑)。
なんで行ったかと言うと、あのニュースが日本でも出たじゃないですか。
その出たときになんかすごい感動したんですよね。
「99%がみんな貧乏人で1%が金持ちの連中で、
そいつらが全部利権とか金儲けの手段を牛耳っているんじゃないか。
冗談じゃない」と。

そのへん日本とかもそうですが、
だいたい貧乏だ貧乏だと言っても、いやもっと下はいるじゃないかとか、
いやいやアフリカに飢餓の子どもたちがいるとかなんかいって、
結局もっと大変な人がいるということになって、
結局1%しか貧乏人がいなくて、
あと99%が裕福なことになっているじゃないですか。
それでなんかしんないけど
みんな豊かだということになって、
文句言っている人たちがなんか知らないけど文句言われしまうというか、
あるいは文句言っている人たち同士が
どっちが貧乏か、貧乏人自慢みたいになっていて、
「オレは四畳半だ」みたいなね(笑)。

そういうくだらないたたかいになって、
貧乏人同士のもめ事になるというのがいつものパターンなんだけど、
それを打ち消すようなスローガンで、
みんなに対してメッセージを言っているという感じがして
すごいいいなと思って行ってきたんです。

でもね、やっぱり日本にいると分からなかったんですよ、
そのオキュパイ・ウォールストリートと言って、
占拠するという、どんな感じできているのか分からないし、
デモが盛り上がっているのは分かったけど、
どういう人たちがどういうモチベーションで来ているのか
というのが全然分からなかったから、
全世界同時行動とか呼びかけられたときに、
これはちょっと日本でやるよりもひとまず行ったほうがいいな
と思って様子を見てきたんですけど、
これがまたすごい、すごかったんですよ。

実際、公園に着いたときはやたらしょぼいんですよ(笑)。
すごい小さい公園で、
ワァ〜だまされたみたいな感じに思ったんですけど(笑)、
公園に泊まっている人数は500人いるかどうかぐらい。
ただ昼になるといっぱい集まって1000人とかになったりするんですけど、
それでも多分、反原発デモとか、日本で起こっていることに比べたら
全然しょぼい。

そこでだまされたと思ったんですけど、
でも実際、そこに10日間ぐらいテントで生活していたんですけど、
そこにいる人たちの感じがすごくて、いろんな人がいるんですよ。
それがすごいよくて、
みんな意図的にリーダをなるべくつくらないようにとか、
あまり細かいことまでごちゃごちゃ言わないで
みんなで議論するのが大事だとか、
そういうのをすごく大事にしたりしているから
その集まり方がすごいよくて、
ホントにみんな言っていることがバラバラなんですよね。

黒人の解放運動のことをやっている人がいたり、
ホームレスのことをやっている人がいたり、
ただ普通にナショナリストみたいなアメリカの旗を振りまくっている人もいたり、
なんかいろんな人がいたりして、
中国人がやたら「中国共産党はよくない」とすごい言っている人がいて、
ちょっと離れたところにはアメリカ人の社会主義者の人が中国の旗を振ったりして(笑)、
この人とこの人が会ったらどうなるんだろう?(笑)みたいで、
こっちはヒヤヒヤして気つかってしょうがないじゃないですか、
でもその人たちは全然気にしてないで、
いろんな人がいるのを大前提でやっている。
そこの集まり方の広がりがすごいいいなと思って、
だからやっぱりなんか起こるときに
バァ〜と集まったりというのがあったと思う。
あの辺を見られたのが経験としてはよかったとなと思いますね。

今までだとなるべく組織があったり、
なるべく主張を同じにしよう、
統一させようみたいなことをしがちなんですが、
唯一の目標は
「1%が牛耳っている世の中をなんとかしよう」ということにして、
他のところはそれぞれが議論してくださいみたいなスタンスは
すごい新しいなということを感じて、それはすごいよかった。

派遣は世界の非常識。イタリアでは労働大臣は殺されました(中村)
司会
この1%が富を独占しているっていう問題は
アメリカに限らず日本でもそうだと思うわけですけども、
日本の現状についてどのようにお考えかお願いします。
中村
ビルゲイツの資産がアメリカの国家予算の何倍だったかな、
そういう状態ですよね。
人数で言ったら全世界の1%もいないと思う。
ほんの一握りの人たちがすごい富を集中している。
そういう状況にどんどんなってきている。
日本だってそれがどんどんすすんでいる。

私なんかは大学を出て、
いまから20年ぐらい前はみんな1億総中流意識なんですよ。
「お前、貧乏人」って言えば怒るわけですね。
みんな自分はいい生活をしている階層だって思っていた。
そういうものでずっと高度経済成長が終わってもずっと維持できてきた。
それが完全にいまは言わない。
「あんた中流でしょう」と言ったら、「バカ、オレは貧乏人だ」と言う。
みんな貧乏人だと思っている。
それぐらい格差が広がってきた。

日本の中で格差が広がっている。
貧困係数というのがありますね。いま世界で2位と言われている。
昔、日本は貧困率というのは非常に低かったんですよ。
貧困というのは別に絶対的な貧困、
アフリカの飢餓とかいうのではなくて、
日本人を所得順に並べて、
それの中間のところからどのぐらい離れているかという率で見るのですが、
日本は世界的にも非常に差が激しい。
貧困率が高い国になった。
それだけ中流がいなくなて格差が広がっているということです。

その原因は何かと言えば、一番大きいのは
格差を広げるような政策をどんどんこの10年間、20年間ぐらいで進めてきた。
1つは働き方にあります。
世界の非常識で、派遣なんて日本のような形の派遣はないですよ。
イタリアでもマネをしようとしたら労働大臣は殺されました。
やり方はともかくとして
「こんなメチャクチャなことはあり得ない」って。
派遣法を推進していた日本の学者はすごいショックを受けていましたが…、
それぐらいみんながちゃんとした働き方をやる
というふうにヨーロッパではなっているんだけども、
日本ではいくらでも格差のある働き方を容認している。
日本も政権がかわって
格差をなくす方向での働き方になるのか
と期待をしたのですが、
残念ながらならなかった。

私は日弁連でずっと貧困問題にかかわって、
労働関係の責任者だったので、
派遣法の改正の国会対策なんかもやっていて、
菅さんと福島さんと女性のほうの亀井さん、
そういう人たちとずっと協議をしていました。
イラ菅が「分かった、分かった中村くん、ホントに言いたいのはどこまでなんだ」
とか言うわけですが、
2時間ぐらいずっと協議をして日弁連ですりあわせをして、
それで「これだったらなんとかみんなを説得するようにがんばりましょう」
という話になって、野党三党案というのがまとまったんです。
あんまり完璧ではないんだけど、
でもいまの派遣法をしっかり規制をかけていき
抜本的改正に一歩踏み出すということでよかったなと思っていて、
それで野党三党案を出して、
そのあと民主党が選挙で勝って、
いよいよ政権とったから野党三党案が出てくるとみんなで期待した。
そうしたら止まってしまった。
止まっただけではなくて、だんだんと腰砕けになっていき、
派遣業界とか、財界とかの影響力でいまや何も議論がされない。

私の親しい龍谷大学の脇田先生と1年半かけて、
『非正規をなくす方法』という本を書いたんだけど、
脇田先生がよく「世界の常識、日本の非常識」と言われるんだけども、
日本の中にいると気づかないんだけど、
日本の格差のある働き方というのは、世界的には完全に非常識。
こんな働き方は許されない。
それで国際競争をしようなんていうのはマナー違反です。
もっともっと国際ルールの働き方にして国際競争をやらせないといけない。
そういう外圧ももっとかける必要がある、
知らせていく必要があるということも考えています。

「やばい、こいつ三畳間ヒルズに行く」(笑)(松本)
司会
松本さんはウォールストリートへ行かれて帰ってきて
日本の貧困問題をどういうふうに見られているのか
ひと言、お願いします。
松本
貧困の質とかもいろいろ違ったりするので分からないのですが、
日本の社会自体、ホントに貧乏で、ホントに一番困っている人が
見殺しにされる感じがあるじゃないですか。
たとえば生活保護だったりしてもなかなかくれないじゃないですか。
ホントに最低限とりあえず死なないというのだけは、
絶対に国というものが存在する以上、
一番やらなければいけないことだと思う、
まして税金を払っているんですから。
生活保護でもいいし、
たとえばいまよく言われている
ベーシック・インカムみたいなものがいいかもしれないんですけど、
とりあえず死なない状態をどれだけつくるかだと思うのです。

オレなんかも思うのですけど、
お金を渡すというのもいいかもしれないけど、
オレはモノでもいいかなと思っていて、
たとえば三畳間の部屋とご飯とみそ汁と漬け物とか納豆がとにかく三食出てくる。
それだけがあるだけでも絶対に死なないじゃないですか。
それすらないというか、いまの世の中は。
巨大な三畳間ヒルズをつくって、
ご飯とみそ汁と納豆を配給するということぐらい税金で絶対にできる。
せめそれぐらいやってくれないかなと思ってて、
その人は審査なしで、無条件に入れると。
その生活でいいよという人は当然、そこに入るんだけども、
もうちょっといいものを食べたいなという人は
働いたりとかなんかできるじゃないですか。

思いつきの案ですが、
なんかそういう最低限のところというのがないから
いまの日本の社会は競争社会が加速する。
みんな思っている、
会社員で働いている人は派遣になったら人生終わりだと思っているし、
派遣の人はクビになってフリーターになったら人生終わりだと思っているし、
フリーターの人も仕事がなくなったら終わりだと思っているというか、
どのランクにいる人たちも
みんな一歩落ちたら人生終わりと思ってみんな生きている。
そういう社会になっているというのは、
ホントにさみしい限りで、いざとなったときに死なないという、
心の安心みたいなものがあれば絶対に強く出れる。

「もうオレいいよ、三畳間ヒルズで住むからいいよ」と言っちゃえば、
こきつかっている上役は
「やばい、こいつ三畳間ヒルズに行く」(笑)
「分かった、分かった、それでいいから」
という感じになったりもすると思う。
最低限のところができていない日本の社会というのは
意外と終わっているなと思いますね。
先進国、先進国と言っていて、豊かだとか言っていますけど、
実はまだ発展していない国のほうが
そういうシステムができている国がたくさんあったりとかするし、
そういうところの人たちとかを見ていると
全然心のゆとりがちがったりする。
そういうのを考えたら日本みたいな競争社会はよくないなと思う。
そのへんをもうちょっと何とかしたいなと思いますね。

何かで失敗しても落ちこぼれないようにする社会を(中村)
中村
高度経済成長してどんどん発展してきて、
豊かになるはずだったのに、なんかさみしくなっていますね。
競争がどんどん激化して、
どう考えてもあんまりいい方向ではないんですね。

ブータンのほうがずっといいような、
そういうふうになったのはなんなのかという思いがあって、
実はデンマークを見てきて、
デンマークって世界で一番幸せな国と言われている。
先進諸国の中で国民の人たちが幸せだと感じる幸福度が一番。
国民は自分たちは幸せだと思っている。
じゃ経済のいまの環境が日本よりもはるかにいいかと言えば、
見ててそんなにそう思わない。
だけど落ちこぼれない社会。
失業しても生活費がちゃんと維持できる。
失業手当がすごく温かいし、教育費はタダだし、医療もタダだしとか、
失業者が暗くならない。
新しいステップで、また新しい大学へ行って、
大学でまたちがう免許をとってまた就職する。
そのときの大学の費用もみんなタダだし。
社会基盤がしっかりしている。
日本というのはすごく自助努力して、賃金もそうなんですけど、
一家の主で男性、世帯主に全部責任を負わせて
その部分ちょっとだけ賃金を出して
自助努力でやれという国をつくってきた。
でもその発想自体が非常にまちがっていたし、
もっともっと社会に還元していくようなシステムにつくりかえていく必要がある。

落ちこぼれるというか、
何かで失敗してもそこがちゃんと落ちこぼれないようにする、
そういうシステムをもっている社会をつくれるかどうかというのは大きいと思う。
松本
確かにね、ずっと近代化以降、
ずっと発展しているはずじゃないですか、ホントは。
技術革新してどんどん経済も発展してと、
そのわりには全然労働時間は増える一方だし、
カネがなければ怪しいファーストフードを
毎日食ったりしているじゃないですか。
絶対に早死にするだろうという感じになってきて、
全然豊かになってないと思って、
一体何のために成長してきたのかと思う。

デモで家賃がタダになるわけはない。いろんなものが全部交わらないと(松本)
司会
松本さんは原発の運動以前にも
「オレの自転車を返せデモ!!」とか、
非常に個性的な運動をいろいろとやられていると思うのですが、
そういう運動で果たして社会は変わってきたのか、
デモをやる意味があるのかというのをちょっと率直に聞きたいのですか
松本
デモをやる意味はスゲェありますよ、
言いたいことをちゃんと言うというのは。
「家賃をタダにせよデモ」とか、
デモをたくさんやっているんですけど、
やっぱ実際それで家賃がタダになるわけはない、それだけだったら。

ただそういう必要が大事というか、
やっぱりちゃんと自分の思っていたことを
ちゃんと言っていける世の中でないと全然だめだと思う。
実際、デモをやって変わらなかったとしても、
やらないよりやったほうが世の中ちがう。
たとえば悪いことをする政府がいたとして、
こっちがなんもしなかったらずっと押してくる。
こちらが同じぐらいの力でやっていると
均衡して同じぐらい悪さがついてくる。
こちらがメチャクチャやったらどんどんよくなってくるというか、
それを忘れてて、やっても意味ないというので
なんもやらないでどんどん悪くなるというのがあるので、
それはよくなるか、悪くなるかというのは
そのときの力関係にもよったりするんで、
これはやっていかなきゃいけないもんだと思う。

デモだけで世の中、変わらないというのは、
デモをあんまり軽く見ているわけではなくて、
たとえば選挙でも選挙だけでは世の中変わらないと思う。
デモだけでも世の中変わらなくて、
いろんなものが全部交わらないと世の中変わっていかない。
デモというのはホント瞬発力の運動だから、
たとえば今回みたいに原発の事故があったときに、
ふざけんじゃねぇというヤツが大量にいるから、
みんなでワァってやるとみんな集まってみんな文句を言う。
それはすごいインパクトもあるし、世の中に影響を与えるし、
それでどこまで変わるかというのは分からないけども、
かといってそれをずっと5年間維持しろといったらそれは不可能ですよね。
あのテンションをずっと「ふざけんじゃねぇ」というやつが毎日、
それはちょっとイヤだなというのがあるから、
それはいろんなものがあって、
そのかわりに逆に日常生活のもうちょっと、
「原発なんかなくってもいいよ」という生活スタイルに変えることもできたりとか、
いろんなものがあって、
だんだんそれで悪い政治家がどんどん落選したりしていくと
相乗作用でよくなってくるのかと思う。
デモも常にやっていかなくてはなと思う。
司会
中村さんにお聞きしたいんですが、
この間、自民党の政治はダメだということで民主党政権になったわけですが、
それでも民主党も普天間の問題とか、
この原発の問題の対応もそうですが、
ぜんぜんなってないという感じで、
民主党もダメだなという感じだと思うのですが、
結局、そういうふうに選挙で政権がかわっても
政治は変わっていないという実態があると思うのですが、
中村さんはそのへんに関してはどのようにお考えでしょうか。

国政だけが急に、とならない。地方自治から少しずつ変えていきたい(中村)
中村
松本さんが言われているように
選挙だけですべてが変わるというのも幻想なんですよね。

選挙でいい政権だとか、いい議員を選べば
大きなステップにはなるんだけども、
それだけでなにもかにもきれいになるという話ではない
というところはよく考えておかなければいけないと思う。
派遣村であれだけ世論をたきつけましたよね、
そうしたらリーマンショックのときにあんなに大量に解雇してきた企業が、
今度の震災のときには派遣を切ってないんです。
やっぱりあれが怖い。
派遣村のときのああいうふうに騒がれるのが怖いから
一応、維持している。
ほとんどああいう騒動にならないような対策をとっている。
首切りという言葉ではなかなかしなかった。
やっぱり動くこと、声をあげるというのはすごく重要ですよね。

そういう1つ1つの課題に
しっかり運動して、デモしたり、ストライキしたり、
いろんなことをしていって、
少しずつ変えていくのと、
そういうことをもう1つ飛躍して
選挙のときに自分たちの要求を通るようなところに変えていくという、
その相乗作用だと思う。

だから民主党に変わったときに、
みんなが非常に自民党のやり方について不満を持っていた。
何とかしようと思って民主党にしたんだけども、
民主党の基盤がどれだけみんなの要求に応えられるものだったのかなというと、
なかなかバラバラな政党ですからむずかしい。
民主党の中でがんばろうとした時期があることは間違いない。
学者の人たちも非常にいい人たちをいっぱい審議会の委員にしました。
いろんな政策を途中までつくっていました。
でもそういうところはいま全部ストップしています。
完全に止められてしまった。
いまはホントにどうしようもないと思っているんだけども、
そういうところをもっともっといろんな運動と組み合わせて
力強く押しあげていかなければいけないし、
国政だけが急にガラッと変わるというのは
なかなか期待できないことになるから、
地方自治から少しずつ変えていきたい。

いろんなことを少しずつ積み重ねていって、
自分たちでつくっていく。
そのためにはまず自分たちが声をあげる。
いまストライキというのがホントになくなってしまっているけど、
それに変わるもので市民運動的なデモというのは
結構、あちこちでやられているけども、
そういうものをどんどんとやっていって、
反映させていくことからはじめる。
そして選挙で勝つということが重要かなと思います。
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