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渡辺輝人弁護士著「残業代請求の理論と実務」購読を!

 過酷な長時間労働から抜け出せないわが国の労働現場。その大きな原因として、低賃金とともに、サービス残業が常態化し、「固定残業代制」や「名ばかり管理職」など残業代を支払わない仕組みが横行していることが挙げられます。「日本屈指の残業代のプロフェッショナル」である京都の渡辺弁護士は、こうした日本の状況を改善し、労働者が適正に残業代請求ができるように、多数の裁判活動と残業代請求ソフトの開発を進めてきました。全国に広く知れ渡っている残業代請求ソフト「給与第一」は彼の考案です。そして、京都地裁の裁判官たちと共同開発し、全国の裁判所で利用されている「きょうとソフト」の開発の中心人物です(ちなみに、命名発案は当職)。そして、彼は、適正な労働者のための残業代請求を認めさせるための研究活動にも時間を費やしてきました。
 残業代をきちんと請求し企業に払わせることは、公正で、命と健康が守られる社会をつくり、ブラックな働かせ方の一掃にもつながっていきます。もっとも、残業代の計算はそんなに単純なものではありません。残業代を支払わないで「タダ働き」を利用しようとする悪徳企業がたくさんいます。そして、それに手を貸して、あの手この手で法律の抜け穴を探る悪徳社会保険労務士らが存在します。とりわけ、タクシー業界や運送業界などでは、いくら残業しても残業割増を支払わなくて良いような仕組みが巧妙に作成されています。

 こうした悪質な残業代計算の仕組みの有効性をめぐって、多数の裁判が闘われています。渡辺弁護士は、それらの裁判闘争において、労働側の立場の理論的な先導の役割を果たしてきました。そして、最高裁判所をはじめ全国の裁判所が残業代請求について労働者にとって一定の理解を示しはしたが、まったく充分ではありません。今回の著作「残業代請求の理論と実務」(旬報社)は、こうした裁判における状況を踏まえて、労働者の立場に立った法解釈を展開し、その正当性を立法過程の精緻な歴史的な考察と学説の分析や膨大な数の判例の分析によって裏付けようと試みたものです。渡辺団員ならではの猪突猛進的な探求活動によって、実務家の枠を超えた研究活動の成果として大変有意義な書籍となっている。
 この書籍の中で、とりわけ彼の探求活動の成果が凝縮されているのが、第2章「法定外の方法による割増賃金の支払い」の部分です。「固定残業代」制度が生まれた経過とそれに対する学説の展開を数多くの文献を丹念に調べ上げて考察し、さらには著名研究者の学説が最高裁判例の形成によって変節してきたことも指摘しています。そして、最近までの研究者の活動が労働基準法37条の「通常の労働時間の賃金」の意義について考察することがきわめて不十分であったと指摘しているのです。労働者の立場に立って実務家弁護士としてたくさんの残業代請求事件に関与してきたからこそ、問題意識を早々に持ち得たのでしょう。私もこの指摘には同感ですが、同時に、われわれ労働弁護士が反省すべき点でもあります。
 固定残業代の有効性について、最高裁判所は、対価性と判別性を要件としています。渡辺弁護士は、この2つの要件の充足性についての具体的判断基準について、日給制、時給制、請負制などの区分ごとに具体例を交えてその特性に基づいた詳細な分析を行ったうえで、自己の見解を展開しています。これまで、このように分類をして分析した研究はなかったのではないでしょうか。こうした意味からもこの書籍の意義は大変高いのです。渡辺弁護士の見解に対しては、当然異論を唱える研究者・実務家もあると思います。今年の秋の労働法学会(立命館大学で開催)では「残業代」が1つのテーマとなりワークショップがもたれる予定です。渡辺弁護士も報告する予定です。おおいに楽しみです。
 この書籍は、労働者の立場に立って残業代請求事件を闘う弁護士・研究者だけでなく、多くの労働運動をになっている皆さんにも読んでいただきたい本です。ご購読をおすすめします。
by 中村和雄  カテゴリ: | コメント(0) | トラックバック(0)

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